ノエル・ティルの心理占星術その2:成長を促す緊張

ノエル・ティルの心理占星術:ハードアスペクトと「成長を促す緊張」について2つの点や天体間の角度関係を現す「アスペクト」。出生図の分析において「天体間の角度がハードアスペクト(90・180度など)を形成する場合、両者は緊張関係にある事を示し、ソフトアスペクト(60・120度)は両者が協調関係にある事を現す」というのが基礎的な解釈ですが、これは必ずしもソフトアスペクト=吉ハードアスペクト=凶であると意味するものではありません。

従来の占星術では、土星、天王星、海王星、冥王星などを含むハードアスペクトは、人生の困難を示す象徴として解釈されてきました。ノエル・ティルの現代占星術への大きな貢献の一つは、1970年代にこれらの角度を「成長を促す緊張」であると提唱した事です。

「成長を促す緊張」とは何か

ハードアスペクトが「成長を促す緊張」であると説明する際に、ノエル・ティルはこう説明した事があります:

第1ハウスは概念上必ず第4-10ハウスと90度を形成します。これは両親(第4、10ハウス)と個人の自我(第1ハウス)が常に「成長を促す緊張関係」にある事を現しているのです。

しつけや反抗期などの経験を含む両親との緊張関係は、子供の成長に必要不可欠なものだと言えるでしょう。幼少時に全く親のしつけを受けずに育てられた場合、「努力」「自己抑制」などの、逆境の克服に必要な要素を身につけられないまま大人になってしまう可能性があります。

この比喩をスクエアやオポジション(180度)などの解釈にあてはめると、「最初は苦痛でも、後に貴重な力となる可能性のある経験」「成長の要因となる経験」と考える事が出来ます。

例えば土星のハードアスペクトは「遅延・欲求不満」などを示すとされていますが、同時に「必要な自己抑制」についても現しています。これは「どちらか一方」ではなく、前者(不満・失意)を経験して後者(忍耐、努力などを含む人格の成熟)に到達すると解釈できます。

成功者の伝記などに、当初の逆境を乗り越えて偉業を達成するという話が多くありますが、彼らのホロスコープを研究すると必ずと言っていい程、出生図に強力なハードアスペクトを複数発見出来ます。彼らはこれだけのハードアスペクトを「持っているのにも関わらず」成功したのでしょうか。それとも「持っているから」こそ、成功するのに必要なエネルギーを得る事が出来たのでしょうか。

緊張なしに良い変化はあり得ない

「セクスタイル(60度)やトライン(120度)は緊張を欠くため現状維持の傾向があるのに対し、スクエアやオポジションは目標達成への強力な原動力となる」というティルの考え方は、今でこそ当たり前に受け入れられていますが、「トライン=吉、スクエア=凶」の概念に強く縛られていた当時の占星術界にとっては非常に衝撃的な提案だったのではないかと想像します。

ハードアスペクトを完全に欠いたホロスコープというのは稀ですが存在します。そのようなホロスコープは残念ながら「安楽な人生」を意味するものではなく、人生の逆境に弱い人格を示す可能性があるのです。土星の自己抑制、天王星の独立精神、海王星のイマジネーション、冥王星の再生力などは、どれも成長・成功には必要不可欠な要素ですが、これらはハードアスペクトのもたらす緊張・逆境を通じてこそ勝ち得ることのできる力なのかもしれません。

占星術においては常に困難を示すと定義されてきたハードアスペクト。「成長を促す緊張」という考えは、ハードアスペクトの象徴する様々な困難の存在を認めつつ、更なる可能性を示してくれる重要な概念です。ご自分の出生図のアスペクトについて考える時、「この象徴が示す困難は、私にどのような成長と力を与えてくれただろうか」と考えてみるのも有意義なのではないでしょうか。