前回の記事「心理占星術における太陽の定義」では太陽を欲求充足のための「燃料・エネルギー」と想定しました。今回は「太陽」と対になる「月」の定義について触れてみます。
太陽の燃料を消費して、月の欲求を満たす
従来の心理占星術においては月を「感情」又は「自我の女性面」として定義する事が多いのですが、ティル流占星術においては月を「統合的欲求」、つまり個人の人格全体を統合する強力な欲求であると考えます。1
「太陽の燃料を消費して、月の欲求を満たす」という考え方がティル流占星術の根底にありますが、これは「月」の示唆する欲求が、太陽のエネルギーに目的・方向性を与えると解釈して良いでしょう。太陽と月を対として考える事によって、両者の星座配置を見るだけでも144通りの個性的な組み合わせが産まれるのです。
例えば魚座の太陽と牡羊座の月を持つ人の場合、「(魚座の)繊細で内向的なエネルギーを使って(牡羊座の)強い自己主張への欲求を果たす必要がある」と言えます。魚座の燃料は争いや競争に向いたエネルギーではありませんから、「一番でありたい」「自分の力と重要さを認識させたい」という牡羊座の月の欲求を果たすためにはある程度の軌道修正が必要になるでしょう。
この場合、魚座のエネルギーを活かした方法(他者への共感、神秘性、芸術性、美的感覚など)で「勝負」していき、頭角を現すというのが理想的でしょう。
逆に、牡羊座の太陽と魚座の月を持つ人の場合は、「(牡羊座の)周囲を率いて、奮闘するエネルギーを使って(魚座の)夢や理想など、無形のものを扱い、有形にする必要がある」と言う事ができます。牡羊座の直線的なエネルギーを使って、魚座の繊細な欲求を満たすのには、これまたある程度の軌道修正を余儀なくされる事が想像出来ます。
この組み合わせの場合、牡羊座の燃料が「ここぞ」という時に必要な独立精神や自己主張となり、魚座の理想や内的世界を効果的に表現する助けになるでしょう。
以上のように、同じ星座の組み合わせでも、月がどちらであるかによって方向性が変わってくる事が伺えます。以下の簡易表は、月の星座が現す「統合的欲求」について短くまとめたものです。
月の星座と統合的欲求
牡羊座 | 一番になりたい、重要な存在でありたい欲求。 | |
牡牛座 | 安全維持、あるべき/あるがままの現状を維持したい欲求。 | |
双子座 | 聡明で賢く、才気煥発で情報通でありたい欲求。 | |
蟹座 | とくに家族内で感情的な安定を求める欲求。 | |
獅子座 | 尊敬され、愛され、賞賛されたい欲求。 | |
乙女座 | 正しく、性格で、洞察豊かでありたい欲求。 | |
天秤座 | 評価され、公平で魅力的で人気者でありたい欲求。 | |
蠍座 | 動じず、深く重要で頼りになり、自給能力のある正しい人と思われたい欲求。 | |
射手座 | 意見を尊重されたい欲求。 | |
山羊座 | 進歩を管理し、物事を実現したい欲求。 | |
水瓶座 | 社会的に重要で特殊な存在でありたい欲求。 | |
魚座 | 理想を認識し、印象を理解し、形のないものを扱いたい欲求。 |
あなたのホロスコープにおける太陽星座と月星座
ここで注意書きです:太陽星座と月星座の組み合わせは必ずしも適職などを現すものではなく、もっと根本的な動機と欲求を現す人格の原型です。個人がどのような環境で育ち、どのような選択肢を持ち、何を優先するのかという事について洞察するには、さらに深くホロスコープ分析を進めていく必要があります。特に月のハウス配置と、月に対する強力なアスペクト(角度)を持つ天体の影響は、生涯を通じて個人の動機と欲求充足に影響を与える重要な測定事項です。
太陽が現す心理的「燃料」と、月の「統合的欲求」。非常にシンプルな組み合わせですが、私たちの出生図を的確に把握するためにはこの両者について深く理解していく事が求められるのです。ご自分のホロスコープの太陽星座と月星座を使って、この新たな定義を試して見られては如何でしょうか。
1:英語では月をReigning Needと呼びます。「統合的欲求」の他にも「統括的欲求」という翻訳があります。
はじめまして。独学で占星術とともにおいります。新里さまのサイトで学ばせていただいております。
太陽と定義の中で太陽と月が牡羊座でコンジャクションしています。どのように導けばよいのでしょうか。
お忙しいところ大変教恐縮ですが教えて頂けたら幸いです。
YURAさん こんにちは。太陽と月の組み合わせは複雑になるので、オンライン講座の第一部を受けていただくとわかりやすいと思います。この場合は、とりあえず「牡羊座の欲求の強調」、という捉え方から始めてみると良いでしょう。