ノエル・ティル

ノエル・ティルの心理占星術その1:欲求理論

天体と12星座の示す心理的欲求

西洋占星術界では知らぬもの無しのノエル・ティル先生ですが、彼の考え方や技法について日本語で語る本はまだ希少です。ここではティル先生の考え方の1つ、「占星術における心理欲求理論」について触れてみます。心理学界のマズロー、マクレランド他の「欲求理論」を占星術で使用する象徴に応用したもので、最初に発表されたのは40年近く前という事ですが、今では様々な形で心理占星術の一部となっています。

「占星術における心理欲求理論」とは、天体と星座が私達の自己実現の為に必要とするものをそれぞれ担っているという考え方に基づいています。性格描写よりも、「何を必要としているか」という観点から洞察します。

以下の簡易表をご覧下さい。

欲求理論による天体の定義

天体 従来の定義 欲求理論上の定義
太陽 自我(エゴ)、生命エネルギー 自己実現のための燃料・エネルギー
感情 統括的欲求
水星 知性・情報伝達 効果的な思考表現の為に必要なもの
金星 人間関係 効果的に人とつきあう為に必要なもの
火星 行動力 効果的に目標達成する為に必要なもの
木星 成長・信仰 期待する報酬となるもの
土星 抑制・恐怖 必要となる抑制
天王星 革新・独立 必要となる革新・独立性
海王星 幻想・理想 必要となる創造性・視覚化
冥王星 死・再生 必要となる破壊と再生・エンパワーメント・新たな視点

 

従来の定義に「欲求・必要」という方向性を付け加えて考えます。

性格描写から更に一歩進む

例えば出生図で「牡羊座の水星」という配置を持つ人の事を、従来の定義(水星=知性、コミュニケーション)を用いて「大胆な思考と発言」「率直な考え方とコミュニケーション」をする人である,等という風に考えるのはしごく妥当な事です。実際にこの描写があてはまる人もいるでしょう。しかし、この配置を持ちながらも自己主張が弱く、くよくよ考え込みがちな性格を持つ人に出会った事がある方もおられると思います。

ここでありがちなのは、「牡羊座の水星」の典型的な描写があてはまらない人について納得する為に、別の天体配置(例えば魚座の月など、「自己主張が弱い」により即した配置)を持ち出して説明しようとする事です。しかしこれを突き詰めて考えると、「都合の良い天体配置を持ち出す事で何だって説明出来てしまう」という状況が生まれがちである事が容易に想像出来ます。10天体に限らず多くの小惑星、恒星その他の天体が使用されている今、吉凶いずれもお望みの描写を得る事は簡単だとすら言えます。

ここで、描写的な占星術技法の弱点が伺えます:

1)環境や習慣が個人に与える影響を考慮にいれる受け幅を持たないという事。

2)占星術の本やレポートでよく見られるような、相矛盾する描写の羅列が多くなるという事。

「占星術における心理欲求理論」においては、「必要」という言葉を前提に置く事によって全く別の解釈が生まれます。

「占星術における心理欲求理論」を用いた解釈

水星が「効果的にコミュニケートする為に必要なもの」を表すと考える場合、「言葉を用いた自己主張が必要」「率直な考え方と話し方をする事が効果的」(つまり、牡羊座のエネルギーを用いたコミュニケーションが必要になる)等のように考える事が出来ます。この解釈は上記の「自己主張の弱い人」の存在と矛盾しない事は勿論、むしろその人の現状打開のために役立つ可能性すらあります。

非常にシンプルな例ですが、この考え方を出生図全体に適用する事で、自己実現のための様々な手がかりが見えてきます。是非、ご自分のホロスコープで試してみて下さい。

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