出生図の火星と土星のアスペクト(コンジャンクション・スクエア・オポジションなど)は、火星の「行動力」と土星の「戦略的視点」を組み合わせた強力な表現を生む可能性があります。本記事では火星土星アスペクトの潜在的可能性についていくつかの視点から考えていきます。
出生図の火星と土星:「兵隊」と「将軍」
出生図の火星の配置は、私達に適したエネルギーの活用の仕方を示しています。エネルギーの活用とはつまり、目的を果たすための「行動」であり、必要な「競争」や「自己主張」を表します。そして私達の権利や安全が脅かされた時には「怒り」等の表現で現れます。
土星は「野心」つまり長期的な目標の象徴であり、「組織化」「戦略的思考」「権威」「制限」などの意味を持ちます。軍隊などの規律だった集団を動かすエネルギーと考えてみても良いかもしれません。
軍隊の比喩でいうと、火星は「兵隊」であり、土星は兵隊を指示する「将軍」といったイメージで捉えると分かりやすいと思います。将軍が上手く指揮を取り、兵隊がよく訓練されていれば、望んだ目的を果たすことが可能になります。
火星土星アスペクトの理想形
軍隊のイメージは仕事やビジネスの世界に直結します。現代では「将軍」はCEOや上司などの権威を持つ存在であり、「兵隊」は社員となります。では、一個人のホロスコープにおいて火星と土星はどう表現されるのか。
まず、火星は「仕事を果たすために必要な力」を表すので、例えば営業マンだったら火星を顧客へのフォローや新規開拓のための活動のために活用します。この場合、火星は営業活動に必要なガッツだったり自己主張能力だったりします。
全く違った仕事についている人の場合も同様で、例えば学者だったら研究や論文作成に、スポーツ選手なら肉体的な表現として火星のエネルギーを活用していることになります。
「兵隊を指揮する将軍」としての土星は、火星の活動を長期的視点や戦略的思考に基づいて導きます。土星と火星が上手く機能している場合は、「目的意識を持つ活動」が容易になり、効率的な行動が可能になります。これが火星土星アスペクトの理想的な表現で、仕事においてあらゆる問題を解決できる能力や、根気よく大きな目標を達成できる力となります。
火星と土星の統合に必要な成長
火星と土星が上手く統合できれば上記のような理想的な表現が生まれるのですが、最初から上手く統合できるケースは稀だと思われます。土星は「遅延」「障害」「成熟」の象徴でもあるからです。
子供の頃、土星は父親や「権威を持つ大人」によって表現されるのですが、この時の経験がネガティブなものであるほど、大人になってからも「権威を持つ存在」への不信感や嫌悪感として現れることがあります。心理的にこうした過去の遺産を抱えていると、無意識のうちに自分の中の土星的な部分(例:長期的な目標を持つ部分や、戦略的に考えられる部分)も否定してしまい、土星が上手く機能しなくなります。
こうなってしまうと、権威を持つ上司や会社などへの不満ばかりを口にするような行動を取る反面、自分自身は長期的な目標を持った行動(昇進に繋がる行動など)が取れなくなる、といったパターンに陥ることも考えられます。
こうした悪循環に陥らないようにするには、過去に父親や「権威を持つ大人」から受けた良くない経験と向き合ったりするという作業も必要になるかもしれません。
以下、火星と土星の各アスペクトを取り上げながら更に考察していきます:
火星土星コンジャンクション(0度)
火星と土星のコンジャンクション(合)は、土星の「長期的な野心」と火星の「行動力」の融合を象徴します。非常に強力な組み合わせで、辛抱強く一つのことに取り組める能力です。長期的な目標を持って行動できるので、壮大な野心でさえ達成しきるだけの潜在的可能性を秘めています。ミッキーマウスの漫画から始まり巨大な事業を作り上げたウォルト・ディズニーは出生図に火星土星コンジャンクションを持っています。
火星土星セクスタイル(60度)
火星と土星のセクスタイル(60度)は、土星の戦略的思考による火星の行動力の「活性化」として捉えることができます。生涯を通じて多作だったことで知られる芸術家のパブロ・ピカソや、数多くのヒット曲を書いたビートルズのポール・マッカートニーは出生図に火星土星セクスタイルを持っています。
火星土星スクエア(90度)
火星と土星のスクエア(90度)は「野心」「権威」「抑制」の象徴である土星と、「自己主張」「怒り」の象徴である火星との間の強い緊張を示唆します。過去に権威の象徴であった大人(主に父親であることが多い)から強い抑圧を受けたり、怒りやフラストレーションを抱えてきた場合、成人後も「権威を持つ存在」に対する不満やイライラが抑えられなくなる可能性があります。
このアスペクトも他のアスペクトと同様に「戦略的な行動」を可能にしますが、2つの天体を心理的に統合させるためには、「権威に対する怒り」や「抑圧されたフラストレーション」を自覚して向き合う必要があるかもしれません。
火星土星トライン(120度)
火星と土星のトライン(120度)は土星の「組織化」「野心」と火星の「自己主張」「行動力」が強く調和した表現を可能にします。会社人ならば組織において上手く自己主張し、責任のある立場を任されることが可能になるでしょう。個人事業主でも長期的目標に基づいた行動を取れるので成功が期待できます。バラク・オバマ元大統領は出生図に火星土星トラインを持っています。
火星土星オポジション(180度)
火星と土星のオポジション(180度)は「権威」「抑制」を表す土星と「怒り」「自己主張」を表す火星の衝突を示唆しています。オポジションというアスペクトは人に投影されやすいので、この場合は「権威を持つ存在」との衝突、という現れ方をするかもしれません。子供の頃は父親との衝突、または父親から受けた抑圧を体験する可能性もあるでしょうし、成人後は上司や年上の人物との対立として表現される可能性もあります。
こうしたよくないパターンから抜け出るには、幼少期にどのような形で権威を持つ大人から抑制を受けたのか、そしてどのようなフラストレーションを抱いてきたのか、などを認識することで、過去を現在に投影しなくてよくなります。成長すればするほど権威を持つ存在との協力関係を築きやすくなっていき、自分の長期的目標の達成に繋げられるであろうことが予測できます。
まとめ:火星土星アスペクトの秘める可能性
本記事では火星と土星のアスペクトが秘める潜在的可能性や、よくある落とし穴について考えてみました。土星と火星は両方とも仕事において発揮されやすい天体なので、主に仕事における表現を考察しています。人間関係においては、火星土星アスペクトは主に「上下関係」や「協力関係」がうまくいくかどうかを表現していると考えています。
ご自分の出生図の火星と土星アスペクトが現在どのように表現されているか、考えるヒントとして活用していただければ光栄です。